A. へバーデン結節(DIP関節の変形性関節症)
- 症状:手の第1関節(DIP)の腫れ・こわばり・ズキズキする痛み
- 動注治療の位置づけ:保存療法(安静、装具、内服、注射など)で痛みが取れない方が対象となります。重篤な副作用も現在のところ報告されておらず、1-2回の治療で強い痛みは軽減されることが多いのが特徴です。奥野先生がおこなわれたアンケート研究でも良好な結果がでています。
対象疾患:へバーデン結節/母指CM関節症/足底腱膜炎/アキレス腱炎
慢性的な痛みの部位(腱付着部や炎症が続く軟部組織)では、異常に増えた細い血管(新生血管=通称“もやもや血管”)が生じやすく、それらの血管には痛み信号を伝える神経が一緒に入り込んでいます。これが長引く痛みの一因になります。
局所麻酔で踵(かかと)や手首の動脈から塞栓物質を注入し、痛みの原因となっている“もやもや血管”へ選択的に到達させ、血流を落とし、痛みを和らげる低侵襲(患者さんの負担の少ない)治療です。多くの論文(後述)で痛みや機能の改善が示されています。早い方は数日〜数週で痛みの軽減を自覚し、数か月かけてさらに改善するケースがあります。おくのクリニックの奥野医師が開発した治療であり、提携クリニックである当院では情報を共有し安全に行うことが可能となっています。外側上顆炎(テニス肘)や足底腱膜炎、アキレス腱炎などで短期〜中期の改善が報告されています。

炎症部位にもやもやとした血管が確認できます
参照:オクノクリニックHP(https://okuno-y-clinic.com/abnormal_neovessels)より
当院では、まず超音波やレントゲン・MRIなどを使用し、病気の診断を行います。その後、病気が確定したら保存療法(安静・リハ・装具・内服・注射など)を行います。保存療法をおこなっても効果不十分な場合、動注療法の適応を考えます。
※血をサラサラにする薬を飲んでいる場合や抗生剤にアレルギーがある場合は治療を行うことができない場合があります。
多くは橈骨動脈や後脛骨動脈を使用します。超音波を使用し、最適な場所を見つけ出し、消毒をしたうえで局所麻酔薬を行います。
異常血管にごく少量の塞栓物質を注入(IPM/CS粒子)。痛みの原因血流を落とし、炎症性刺激を抑えます。
実際の治療動画になります。痛みはほぼありません
白いもやもやしたものが塞栓物質が入っている様子となります。
病変部位が熱くなる感じやピリピリした感じがありますがすぐにおさまります。
穿刺部を圧迫止血し、10-15分後、止血を確認し帰宅していただきます。
帰宅後も特に注意点はありません。入浴も可能です。
2週―4週間後に再診していただき痛みの推移を評価します。必要に応じて保存療法などを継続しておこなうこともあります。
開院当初から積極的に動注治療をおこなってきました。指の関節の痛みや足底腱膜炎やアキレス腱炎などは内服・注射・ストレッチなど行いますが、なかなか改善が見られず変形が進み、痛みが取れるまで我慢するしかないといった症例が多く存在します。近年、体外衝撃波やプロロセラピー(当院でもおこなっています)といった比較的新しい治療法も行われていますが、その中でも動注治療は炎症部位にアプローチすることなく間接的に治療することのできる画期的な治療法です。ここ数年でメディアでも取り上げられ、論文も多く輩出されてきており結果も出ていますので安心しておすすめできる治療です。唯一の欠点としては、自費診療となるため保険診療と比べてやや高額になります。生活に支障をきたしておりお困りの方は一度ご相談いただけたらと思います。