クリニックご案内
診療科目と内容
痛みの部位と病名
痛みの治療方法
よくあるご質問

もやもや血管に対する「動注治療」|いしお痛みのクリニック

もやもや血管に対する「動注治療」

対象疾患:へバーデン結節/母指CM関節症/足底腱膜炎/アキレス腱炎

1. まず、「もやもや血管」とは?

慢性的な痛みの部位(腱付着部や炎症が続く軟部組織)では、異常に増えた細い血管(新生血管=通称“もやもや血管”)が生じやすく、それらの血管には痛み信号を伝える神経が一緒に入り込んでいます。これが長引く痛みの一因になります。

2. 動注治療とは?

局所麻酔で踵(かかと)や手首の動脈から塞栓物質を注入し、痛みの原因となっている“もやもや血管”へ選択的に到達させ、血流を落とし、痛みを和らげる低侵襲(患者さんの負担の少ない)治療です。多くの論文(後述)で痛みや機能の改善が示されています。早い方は数日〜数週で痛みの軽減を自覚し、数か月かけてさらに改善するケースがあります。おくのクリニックの奥野医師が開発した治療であり、提携クリニックである当院では情報を共有し安全に行うことが可能となっています。外側上顆炎(テニス肘)や足底腱膜炎、アキレス腱炎などで短期〜中期の改善が報告されています。

炎症部位にもやもやとした血管が確認できます

炎症部位にもやもやとした血管が確認できます
参照:オクノクリニックHP(https://okuno-y-clinic.com/abnormal_neovessels)より

3. 疾患別のポイント

A. へバーデン結節(DIP関節の変形性関節症)

  • 症状:手の第1関節(DIP)の腫れ・こわばり・ズキズキする痛み
  • 動注治療の位置づけ:保存療法(安静、装具、内服、注射など)で痛みが取れない方が対象となります。重篤な副作用も現在のところ報告されておらず、1-2回の治療で強い痛みは軽減されることが多いのが特徴です。奥野先生がおこなわれたアンケート研究でも良好な結果がでています。
    アンケート01 アンケート01
    アンケート01 アンケート02

B. CM関節症(母指CM関節の変形性関節症)

  • 症状:つまみ・ひねり動作で親指の付け根が痛む、瓶のフタ開けや家事で増悪
  • 動注治療の位置づけ:装具・注射で改善しない場合の治療の選択肢の一つです。海外の報告においても、変形性の手の関節疾患において痛みの短期改善が示唆されています(長期・比較試験は今後の課題)。

C. 足底腱膜炎

  • 症状:長時間の立位後に増悪する踵の痛み
  • エビデンス:足底腱膜炎に対する動注治療で痛みの有意改善と長期追跡での持続が報告されています。

D. アキレス腱炎(慢性)

  • 症状:走跳後のアキレス腱のズキズキとした痛み、圧痛や朝のこわばりなど
  • エビデンス:保存療法抵抗例のアキレス腱炎で、動注療法が痛みとADLを改善した短〜中期成績が報告されています
    ※肘の外側上顆炎(テニス肘)や膝OAなど、他部位でも有効性を示す報告が近年増えてきています。

4. 治療の流れ(当院の標準例)

① 適応判断とご説明

当院では、まず超音波やレントゲン・MRIなどを使用し、病気の診断を行います。その後、病気が確定したら保存療法(安静・リハ・装具・内服・注射など)を行います。保存療法をおこなっても効果不十分な場合、動注療法の適応を考えます。

※血をサラサラにする薬を飲んでいる場合や抗生剤にアレルギーがある場合は治療を行うことができない場合があります。

② 局所麻酔下に挿入

多くは橈骨動脈や後脛骨動脈を使用します。超音波を使用し、最適な場所を見つけ出し、消毒をしたうえで局所麻酔薬を行います。

③ 選択的塞栓

異常血管にごく少量の塞栓物質を注入(IPM/CS粒子)。痛みの原因血流を落とし、炎症性刺激を抑えます。

実際の治療動画になります。痛みはほぼありません

白いもやもやしたものが塞栓物質が入っている様子となります。
病変部位が熱くなる感じやピリピリした感じがありますがすぐにおさまります。

④ 止血・観察・ご帰宅

穿刺部を圧迫止血し、10-15分後、止血を確認し帰宅していただきます。
帰宅後も特に注意点はありません。入浴も可能です。

⑤ フォローアップ

2週―4週間後に再診していただき痛みの推移を評価します。必要に応じて保存療法などを継続しておこなうこともあります。

5. 安全性と合併症

  • よくある一過性反応:穿刺部痛、皮下出血、治療部位の違和感や一過性のだるさ
  • 稀だが注意が必要なもの:皮膚の虚血変化・浅い潰瘍、知覚異常、穿刺部出血、血管解離・穿孔など。
  • 重篤例の報告:非常にまれに広範な腫脹や皮膚変化などの重篤合併症が生じた症例報告もあります。

6. よくある質問(FAQ)

Q.何回受ければよいですか?
多くは1―2回で様子を見ます。痛みが残る場合に数か月以降で追加治療を検討します。国際レビューでも短期間での疼痛低下が一貫して示されています。
Q.効果はどれくらい続きますか?
病態や生活動作により個人差がありますが、中期〜長期での持続を示す報告があります(部位によりエビデンス量は異なります)。
Q.他の治療(リハ・装具・注射)と併用できますか?
はい。リハビリ・フォーム指導・装具(インソール等)は再発予防にも有用です。足底腱膜炎やアキレス腱炎では荷重管理・ストレッチも重要です。
Q.金属や薬剤アレルギーが心配です
当院ではカテーテルは使用しないため金属アレルギーは特に問題なく治療を行うことができます。薬剤では、抗生剤にアレルギーがある場合は施行が困難なことがあります。受診時に問診させていただき、治療をするか決断させていただきます。

7. 当院での適応の目安

  • 3か月以上の慢性痛が続き、保存療法で十分な改善が得られない
  • エコー所見から新生血管関与が疑われる
  • 手術は避けたい/仕事やスポーツ復帰を急ぎたいが低侵襲を希望
  • 糖尿病や末梢循環障害がある方、抗血栓薬内服中の方は個別評価が必要

8. 院長より

開院当初から積極的に動注治療をおこなってきました。指の関節の痛みや足底腱膜炎やアキレス腱炎などは内服・注射・ストレッチなど行いますが、なかなか改善が見られず変形が進み、痛みが取れるまで我慢するしかないといった症例が多く存在します。近年、体外衝撃波やプロロセラピー(当院でもおこなっています)といった比較的新しい治療法も行われていますが、その中でも動注治療は炎症部位にアプローチすることなく間接的に治療することのできる画期的な治療法です。ここ数年でメディアでも取り上げられ、論文も多く輩出されてきており結果も出ていますので安心しておすすめできる治療です。唯一の欠点としては、自費診療となるため保険診療と比べてやや高額になります。生活に支障をきたしておりお困りの方は一度ご相談いただけたらと思います。

参考文献

  • Epelboym Y, et al. Skeletal Radiology, 2024:難治性腱障害に対するTAEで短期の痛み改善が一貫。安全性も概説。
  • Lin HY, et al. European Radiology, 2024:合併症と対処を体系的に整理(微小動脈穿孔、解離、皮膚虚血など)。
  • Okuno Y, et al. CVIR, 2014/2015:異常新生血管を標的とした塞栓で膝OAなどの痛み改善、大きな合併症なし。
  • Okuno Y, 2013:IPM/CS粒子を用いた腱障害の疼痛改善(VASの有意低下)。
  • Iwamoto W, 2017:外側上顆炎に対するTAEの有効性と安全性。
  • 手のOA(DIP・PIP・CM含む)に対するTAE短期成績報告。
  • アキレス腱炎に対するTAME多施設評価(短〜中期アウトカム)。
  • Nakamura H, 2025(JVIR):IPM/CSは超短時間で再開通する特性について(皮膚虚血リスク低減の理論的背景)。
  • Boonlorm W, 2025:重篤合併症の症例報告(患者選択・塞栓量・材料選択の重要性)。

Page
Top

WEB予約

交通案内